【#2 映画館】Shunのカナダ滞在記

この町には映画館が1つある。ただ、遠い。カナダの広大な国土と少ない人口から分かるように、カナダは相当な車社会である。バンクーバーから70km離れた僕の住む町アボッツフォードには電車が通っていない。ということで雨の中、バスに50分揺られてマーベルの最新作、エターナルズを観に行く。

映画館そのものは日本のそれとほとんど同じである。常に最新作が上映され、初デートの手頃な選択肢として利用される。チケットを券売機で買い、薄暗いエスカレーターをゆっくりと登ると、ムッとするポップコーンの臭いに包まれる。踏み潰されたポップコーンも端に固まっているゲームセンターも一斉にトイレに群がる人々の表情も日本の映画館を構成するものと酷似している。深い赤の分厚いカーペットの上に列を作り、ポップコーンとコーラを買う。細かい話をするとポップコーンの入れ物は紙袋で、コーラはペットボトルに入っている。
映画が始まる前に企業と映画のコマーシャルがやはり当然のように流れるのだか、やけに車の宣伝が多かった。フォード、シボレー、ポルシェ、レクサスの4本である。映画が始まる前にポップコーンを食べ終わってしまうよと友達はぼやき、僕はレクサスのカナダでの立ち位置について想いを巡らせる。
長いコマーシャルが終わり、携帯を触り始めていた友達は視線を前方に戻す。本編の至る所にハリウッド的なギャグが散りばめられているのだが、笑い声が聞こえてこないことは一度もなかった。まあカナダ人は映画館で騒がしい人々なんだろうと気にすることなく画面に集中していたが、映画が終わった後にカナダ人の友人と後ろのおじさんうるさかったよねという話になったので、映画館で静かにした方がいいのはカナダでも同じなようだ。全然面白くないところでも笑ってたよ、と首を横に振っていたので笑うタイミングによっては許される可能性もあるのかもしれない。

映画が終わると一様にトイレに行き、長いエスカレーターを降り、降り止まない雨の中バス停を探す。会話が終わり沈黙するとちょうどバスが到着し、再びバスに50分乗って大学の寮に帰る。本当に雨の多い地域である。

【#3 フットサル】へ続く

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