パレスチナスタディツアーの想い

このプロジェクトは日本で「新しい平和の形を作る」ことが目的

これから日本を背負って立つ(有権者になり、ひいては政治家にもなる)若者たちが、「戦争はなぜ起こり、どうすれば終息するのか?」また、「平和の意味や価値とはなんなのか?」等を学び、理解しないと、世界の緊張が高まる中、これからの日本という国が間違った選択をしてしまうのではないか?今の「戦争はいけない」だけの平和教育では足りないのではないか?と、昨今の世界の情勢を見ると危機感を覚えます。

このプロジェクトは、新しい平和教育を作る、世界を平和にする、第一歩なのです。パレスチナに15歳の少女、貴子さんが行くことは、壮大なプロジェクトの第一歩なのです。

「世界には、大変な状況の人たちがたくさんいる」

大人の私たちはきっと頭では理解していること。でも当時小学4年生だった貴子さんには衝撃的でした。それ以降、特定非営利活動法人Connection of the Children(CoC)が主催する数々の異文化理解イベントに参加する中で、世界の魅力に加え、ネガティブな部分も気になり始めた貴子さん。

そんな彼女の運命を大きく動かしたのが、CoCメンバーのひとり、津高政志との出会い。

津高(写真左)はこれまで非政府組織(NGO)や国際赤十字といった国際機関に所属しながらパレスチナ、東日本大震災、フィリピン、アフガニスタン、南スーダン、ミャンマーで活動を継続してきた人道支援のエキスパート。津高と出会ったことで人道支援の世界に興味を持ちはじめた貴子さん。

また、大好きなおばあちゃんが看護師で、みんなから頼られている姿を見たことにも影響を受け、いつしか「紛争地域で人道支援を行う医療従事者になりたい」という夢を持つようになりました。

※本文中に登場する国際赤十字は、今回のプロジェクトには関係しておりません。

「人道支援とは?」

人道支援の定義は、簡単にまとめると、「紛争地などで、人間から死と苦痛を遠ざけ、人間の尊厳を守る支援活動」。

これはあまり知られていませんが、この守られる「人間」に今回のウクライナ侵攻でいえば、ロシア人も、ウクライナ人も含まれるのです。津高の所属していた国際赤十字を始め多くの人道支援団体は、敵味方、つまり善悪の判断に関係なく常に中立の立場で純粋に人を助けます。

また、人道支援というと、紛争の最前線に行って、人を守る危ない活動というイメージがありますが、人道支援活動の原則として、支援する側の安全が確保されない限りは支援自体を見送るという判断があります。自分たちが支援を受ける側に回っては意味がない。ですので人道支援の最前線は、紛争の最前線から一歩引いた安全なところに設定されます。

安全なところから、地域の人道上の問題課題を抽出し、医療面、衛生面、財政面、インフラ面などでの対策を決定し、実行します。

また、人道支援は民間人だけでなく、中立的な立場から怪我人や捕虜に対しても行うので、紛争当事者双方からも必要な存在になります。したがって、基本的に双方から攻撃の対象ではなくなります。その立場を用いて、人道支援機関は危機的な状況が国際人道法に違反する行為によって起きている場合は、当事者にその行為を止めるよう働きかける「保護」という活動も行います。

貴子さんは、そうしたことを知るにつれ、人道支援により意義ややりがいを感じるようになりました。

「自分たちは平和、でもそれだけでいいの??」

貴子さんは、そうした人道支援の世界を知るにつれ、「戦争と平和」についてより考えるようになり、自分の信じていた平和の定義「戦争や核の悲惨さを忘れず、二度と起こさない」に疑問を持ちはじめました。津高と話せば話すほど、その定義だけで、本当に世界平和はくるのだろうか?と考え始めたのです。

「たぶん、世界各地で戦争や平和の定義は違うはずだ!それを知らずに自分たちは平和だって安心していていいのだろうか?」

平和の真の意味や価値を知るには、平和が当たり前でない場所にこそヒントがあるのではないかと思うようになりました。そこで貴子さんは行動を起こします。その答えを求め、母親を通じてCoCに「価値ある海外の経験をしたい」と相談にきました。

義務教育が終わり、初めての自分で選ぶ教育体験に海外を選んだのです。

「私たち日本人は本当の平和の意味や価値がわかっているのか」

確かに、私たち大人も平和教育で学んできたことは「戦争はいけない」ということだったのではないでしょうか。もちろんこれは確かに正しいこと。ただ私たちをはじめ多くの日本の大人たちは、当たり前だと思い平和の本当の意味や価値を考えてこなかったのではないかと貴子によって気づかされたのです。

試しに、CoC代表加藤の妻(コロンビア出身)に「平和の価値は何?」と聞いてみました。そうしたら、平和がいかに価値のあることかが、とめどなく出てくるのです。他の外国人もそう。

加えて津高も「日本の教育の中で疑問を感じるのは『戦争を過去のものとして教えている』ように感じること。確かに『日本にとって戦争は昔のことで今は平和でよかった。だからそれを守っていこう』っていうところまではいい。でも多くの国々にとって戦争は過去のことではないから、世界に視点を広げなきゃいけない。だから貴子さんが言っている『自分たちだけが平和であればいいのか?』っていう問いこそが重要なんだ。それに対する答えは『いいえ』であると信じたいけど、だからといって行動を起こす人は数少ない」と語ります。

これまでの私たちが行ってきた子ども向けの活動の軸になっていたのは「本物を体感すること」。そして、その中で「自分で決めたことに挑戦すること」だったので、今回もこの状況を変えるには、見聞きした情報ではない「リアルな体験」を軸にしないと現状を変えるのは難しいのではないかという声が上がりました。

CoCメンバーのこの想いと、貴子さんから相談された「価値のある海外の体験をしたい」という話とが、そのとき1つにつながり、大きく動き出したのです。

「よし、パレスチナに行こう!」

実際に貴子さんの底なしの好奇心とやる気、真剣度と覚悟を目の当たりにするうちに、これは単なる夢物語で終わらせるわけにはいかない、と津高は腹を括りました。「よし、行こう」と。そして行き先は、数々の紛争地・被災地を見てきた中で、パレスチナしかない、と。

パレスチナは、イスラエルによる占領が続いている地域で、人道支援を必要とする状況が何十年も続いています。ただ、ガザ地区(上の地図、左下)を除けば軍事的な対立は少なく、実際は厳しい占領政策により土地を自由に使えないなど、パレスチナ人の人権が守られていないという状況にあります。

パレスチナを選んだ理由は、日本の少女でも安全を確保しながら支援活動を垣間見られる場所だからです。

今回目的地としているエルサレムとベツレヘムは全世界から400万人以上の観光客が来る観光地。エルサレムにはNHKの海外支局があり、2019年には経済産業省の後援で、日本・イスラエルビジネスフォーラムが開かれ、100社の日系企業がビジネスの機会を求め参加しているような場所です。

外務省の海外安全情報によると、5段階の危険評価で、レベル1「十分注意して下さい」。これはフィリピン、インドネシア、インドなどと同じレベル(2022年12月現在)です。もちろん海外なので細心の注意は必要ですが、日本人が単なる観光としても行けてしまう場所です。

また「もちろんレベル1であっても、危険な場所・日付・時間帯はある。それは先進国でも、深夜に一人でこの通りは出歩かない方がいい、といったことと同じ。それを知らないと思わぬ事態が起こり得るのは確かなので、現地の人道支援ネットワークと密に連携を取り、それを回避していく」と津高は言います。

津高は、直近ではミャンマーのひとつの州を任され支援活動全体を統括する仕事をしていました。自分の部下の安全安心を第一に考え、人道支援を着実に進行させる高いノウハウも持っています。

人道支援の基本に則り、今回は安全な時間帯に安全なエリアを選んで行動します。それでも医療現場を始め、通常のツアーではいけない場所や、話せない人と会話をすることが可能です。例えば、難民キャンプなどは、一般の観光客も訪れるような場所ですが、事前学習で歴史文化を学び、人道支援のエキスパートと同行することで、より深い体験と理解が可能になるのです。

十分安全を確保し現地の人道支援のリアルを体感できると考えています。

※本文中に登場するNHK、経済産業省、外務省は、今回のプロジェクトには関係しておりません。

「気軽には行けない。それはわかっている。でも、この子を現場に連れて行くことには、代え難い価値がある」

※イスラエルとパレスチナを分断する壁

こうしてスタディツアー企画が立ち上がったのですが、現在コロナ対応で出入国は混乱し、ウクライナ危機で燃料サーチャージ価格も高騰。15歳少女のスタディツアーの夢を叶えるためのハードルは、いつになく高いものになっています。

今や経験豊富な人道支援者となった津高も、最初にパレスチナの土を踏んだのは26歳の時。複雑極まりない政治状況の被占領地パレスチナは、歴史や文化背景をどんなに学んでも、毎回新しい衝撃と学びがあるといいます。

義務教育を終えたばかりの15歳という若者の純粋で真っ直ぐな目と心が、パレスチナのリアルをどう感じ、そこで得たもので未来をどう拓いていくのかは、我々にとっても、非常に興味深いものです。

間違いなく、戦争はなくならないなどの思い込みや、自分の価値基準で判断する大人には見えないものを掴んで帰ってきてくれると信じています。

「帰国後、ひとりの少女の経験をもとに、みなが地球市民として、戦争と平和を語りあう」

このプロジェクトは、パレスチナに15歳の少女が行って帰ってくるのがメインの目的ではありません。もっと大きな挑戦なのです。

帰国後、貴子さんは日本各地の学校をめぐり、世界で最も解決が難しい紛争地の1つと言われるパレスチナで自らが感じたことを同世代の子どもたち届け、「戦争」や「平和の価値や意味」を議論し、それを発表し合います。子どもたち一人ひとりが、平和の価値や意味を理解し、自分の言葉で言えるように。自分の声を持てるように

そのために、パレスチナに行く前には、津高が詳細な事前学習の機会を用意し、ステップを踏みながら、地理、社会情勢、宗教、歴史、文化風習、旅行の心構え、万が一の事態に備えた対応等を学び、直前には旅程のシミュレーションを行います。「事前学習はこのプロジェクトにおいて最も重要な部分になる。パレスチナは良くも悪くも表面だけ見て帰ってくることができる場所。『戦争の苦しみや虚しさ』『平和の価値や意味』についての学びを最大化するには背景情報が不可欠だ」と津高は断言します。

すでに3回の事前学習を終えた貴子さん。早くも現地で実際に目にしたいこと、聞きたいことやクリアにしたいことをノートに多く書き出しています。

現地では、実際に難民キャンプや人道支援を行う医療活動などの現場を訪問し、事前にノートに書き出した内容を、支援するスタッフ、支援を受ける住民に取材します。

それら貴重な経験を、日本の子どもたちに持ち帰るのです。そこには、イスラエルとパレスチナのどちらが良い悪いなどの判断はありません。人道支援の原則に則り、中立な立場で、現地のリアルを伝えます。

「平和を作ろうとする子どもの数は、世界を変える力になる」

イスラエル・パレスチナ問題は、私たち大人が残してしまった最大の国際課題のひとつです。これからを担う若い世代が、貴子さんを通して、紛争解決や平和構築について学び、他者との違いを受け入れ、共生する道を探り、自分の頭で考え平和を目指した行動ができる大人に成長してほしいと願います。

平和がなんたるかを理解し、自分の言葉で話せる子どもが増えることで、彼らが大人になったとき、パレスチナ紛争をはじめ、平和とは程遠い世界の状況を解決する力になる。このプロジェクトは、それらすべての始まりとなる最初の第一歩になると信じています。

随行者について

現在参加者一人、随行者二人を考えております。ツアーリーダーの津高は男性で、参加者は女性のため、ツアー中に適切な心のケアや体調管理などを行う看護師資格を持った大人の女性の同行を予定しています。また、緊急事態が発生した際に、すぐに車に乗って全員が一緒に移動可能にするため、4人を人数の上限として安全面は担保できると考えております。

特定非営利活動法人Connection of the Childrenについて

本企画を主催するCoCは、「全ての子どもがやりたい事を見つけ、それに挑戦できる社会」と「国籍や文化、障がいに関わらず誰もが温かい気持ちで繋がれる社会」の実現に向け、2010年から活動を続けています。

横浜にある活動拠点「CASACO」は、2階に留学生が暮らし、1階では訪れる人が日々さまざまな世界に出会い、自分のやりたいことを見つけられる場となっています。貴子さんと出会ったのも、このCASACOで毎月行われている「世界の朝ごはん」という企画でした。毎年夏には、東京都新島村、新島村教育委員会と連携し、「式根島インクルーシブサマーキャンプ」を開催。また、横浜市健康福祉局、パラリンピアンの2人と連携し、障がいのあるなし関係なく挑戦できるスポーツ教室「一歩踏み出そう!プロフェッショナルと自分の道を探せ!」を通年で開催。直近では、横浜市国際局と連携し、CASACOにて横浜に暮らすウクライナからの避難民と日本人が温かい繋がりを作れるプログラムを展開しています。その他にも子どもたちとポジティブな未来を描く「未来百景」や、世界を一本の糸で繋ぐ「糸つなぎ」など、理念の達成に向けワクワクする挑戦を日々続けています。

※本紹介文内に登場する、東京都新島村、新島村教育委員会、横浜市健康福祉局、横浜市国際局は、今回のプロジェクトには関係しておりません。金の使い道

実施スケジュール

2022年
11月上旬 貴子さんにパレスチナの事前学習会開始(3月上旬まで定期開催)

2023年
03月  パレスチナへ出発
04月  帰国報告会開催・冊子の制作開始
07月 〜 2024年6月 日本各地の学校等教育機関での出張講演&一緒に平和を考える会
10月  冊子完成、リターンとして発送。その後出版

2024年〜
・第2の貴子さんとして、世界に飛び立つ若者を支援
・出張講演&一緒に平和を考える会の継続的な実施

出張講演&一緒に平和を考える会について

日本各地の学校等教育機関での出張講演&一緒に平和を考える会は、

1)貴子さん(津高が入る回もございます)のパレスチナで感じたリアルの発表
 →写真や動画を多用しながら、貴子さんの感じたリアルをありのまま伝えます
2)「なぜ戦争は起こるのか?」をグループに分かれて議論、まとめ
3)2)のまとめをもとに「平和の価値とは何か?」をグループに分かれて議論、まとめ
4)全体で「平和の価値とは何か?」を発表

の構成で開催を予定しています。貴子さんが感じてきたリアルを聞くことで、同世代の子どもたちは「なぜ戦争が起こるのか」「平和の価値とは何か?」を自分の中で考える気づきを得ることができます。重要なのは、貴子さんからそれらの問いの答えは伝えないことです。10人いれば10通りの考え方があります。子どもたち一人ひとりが、平和の価値や意味を理解し、自分の言葉でそれが言えるように。自分の声を持てるようにすることが「行動できる大人」を増やすことに繋がり、ひいては世界を変える力になると信じているからです。

また、各回で発表された子どもたちの言葉は、CoCのブログ、SNSで随時発信していきます。そうすることで、より多くの方々と平和の価値を考えることができるからです。

講演会をご希望の方はこちらからお問い合わせください。

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